見慣れた名古屋駅の金時計前の喧騒を抜け、名鉄の降車改札を抜け、まもなく閉店を迎える百貨店を抜け、やがて人通りが少なくなった。
2022/09/11 20:25
静かな通路を抜けるとそこは多くの旅人が出発を待つ名鉄BT(バスターミナル)だった。
およそ20年愛知県に住んでいながら初めてやってきた。
様々な行先と乗り場が所狭しと書かれている。
私が指定されたのは5番のりば。
新宿や福島、仙台など遠方の行先を見ると旅行感が出てテンションが上がるのは旅好きあるあるだろうか。
私はこれから、1番右下に記載されております、北九州・福岡方面へと旅立ちます...。
21時発、堂々の小倉・福岡の文字。
皆どこへ行くのだろう、割とそれなりの人数が通路前のベンチに待機している。
眼前を大型バスが次々と行き交う。
20:47
放送とともについに福岡行きのバス「どんたく号」の入場。
直近に乗車した金沢行き青木バスとはサイズも貫禄も違う...!!
↑直近の夜行バス乗車記録
名古屋で見る「福岡」行きの文字。
どんたく号は名古屋の名鉄バスと福岡の西鉄バスが共同運行する老舗の夜行バス路線だそうで。個人的には夜行バスは辛いので利用したくなかったが金銭的な問題で利用せざるを得ない形に(永遠に言ってる)。九州に朝入りできて航空機と大差ない値段となれば利用しない手はないのだ...!大丈夫、学生だから、体力でなんとかする(これも永遠に言ってる)。
ちなみにこの日は名鉄便でした。
丁寧な改札を受け、車内に。
預けたでっかいナップの控番号を受け取った。
車内のカーテンは既に閉まっている。出発まで沈黙の時間が続く。
隣は昼間から公園で酒飲んでそうなおじさんだ。
一通り座席の使い方を見て落ち着く体勢に入る。
今回乗車した名鉄便の「どんたく号」はプレミアムワイドシートなる座席を備えており、座ってみればなるほど夜行バスにしてはだいぶ余裕のある造りだと納得させられる。
もはや長距離夜行の標準装備とも言える3列独立シートはもちろん、座席は相当深くまで倒れ、レッグレストはもちろん、前部座席の足元に窪みがあり、これがかなり奥まで足を入れることができる。身長182cmの私でも割と身体を伸ばせるくらい余裕がある。また、通路側の肘掛は倒すことができ、少しでも座席幅が広くなるよう工夫されている。
座席だけではなく、プライバシーカーテンや腰が痛くならないようにと小さいクッションだったり、ブランケット、おしぼり(トイレ上にある)などその設備は夜行バスとしては十分なもの。
これは快眠できるかもしれないと期待を抱いた私を乗せたバスは、21時00分定刻に名鉄BTを出発した。長旅の始まりだ。
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出発するとまもなく簡単な案内とともに交代運転士からサービスの紙パックのお茶が渡される。これ、嬉しいは嬉しいが飲むなら一気に全部飲まなきゃいかんじゃん...。
21時15分、名古屋最大の繁華街 栄に到着。
カーテンが閉まっていて外が見えないものの、GPSによればオアシス21のバス停に止まっているよう。ここで新たに1人の乗客を乗せて18分、栄を出発。乗車率は50%程度だろうか。
栄を出るとバスの詳しい案内とともに、途中で休憩が2回あることも伝えられた。
22:20
最初の休憩地 土山SA(滋賀県)に到着。
1週間前にも四国をドライブした際に同じく最初の休憩地として寄っている。
外に出れば少し肌寒い。そして秋の虫の音がよく聞こえる。
もう夏は過ぎ去ってしまったのだろうか...。
先週とは比べ物にならないほど活気のない夜のSAでトイレを済ませ(一応どんたく号にもトイレはある)、念の為お茶を追加で購入し夜を明かす準備を整えた。
こちらが福岡まで私を連れていってくれる頼もしいどんたく号。いわゆるハイデッカーというやつでしょうか。車高が非常に高い(と感じる)。
そして今更ながらiPhone11 Proの暗所性能に驚く。
出発時刻になると運転手が何度も何度も人数確認を行い、22時31分、土山SAを出発。程なく消灯。バスは遥か遠方の九州に向けて走り出した。
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2022/09/12 5:32
壇ノ浦といえば平家滅亡の地として名を馳せる地だ。
早くも東の空が白んできている。
ここまで何度も目覚めを繰り返しながらも4時間弱は眠れた模様。ひたすらに長い夜だった。
朝になりかけた空気を吸いに外に出てみると寝不足の感はさほどない。
そして本州の1番西ということは...
朝焼けをバックに九州と関門橋が!!!
やっと出会えたね!!!
にしても本州と四国、本州と北海道、いずれも長大な橋やトンネルを架けねばならぬ距離なのに本州と九州はこんな目と鼻の先の距離なのか。(九州は以前にも来ているがここをトンネルで通過するJRで来た。ちなみにその時行った場所は博多、熊本、鹿児島、指宿)
ここまで来れば福岡までラストスパートだ。
小倉など点々と停車し乗客を下ろしながら博多BTへと向かう。
back numberの「泡と羊」を聴きながら閉じたカーテンの隙間を引っ張って覗き眺める車窓。素晴らしい青空に朝日が差し込んでいる様子が見て取れる。今日はいい日になるだろう。
7:59
ようこそ!博多へ!Welcome to Hakata!
定刻より3分早く終点 博多BTに到着した。
高速バス到着案内には新宿や仙台といった表示は消え去り、九州各地の地名が表示されている。九州の地名だらけの中に唯一存在する「名古屋」の3文字が異彩を放っている。
どんたく号…壇ノ浦から博多までの間にまた数十分寝ることができ、それ合わせても十分な睡眠とはいかないものの、豪華な設備でこれならまた利用するのもアリかな…と夜行バス乗りたくない私は思いました。
運転手さんから預けたパンパンのナップを受け取り、いよいよ一人ぼっち、九州の地に解き放たれた。
2022/09/19:投稿
2023/11/18:再投稿